カメムシによる稲への被害は、農家にとって深刻な問題です。化学農薬を使いたくない自然農法を実践している農家にとって、効果的で安全な防除法を見つけることは大切です。
意外にも、市販の「焼肉のタレ」がカメムシに対して効果があると言われていますよね。
この記事では、その理由と具体的な散布方法、カメムシに対する忌避効果のメカニズムについて詳しく説明します。
焼肉のタレがカメムシに効く理由
焼肉のタレがカメムシに効く理由は、タレに含まれる酵素や香辛料、植物油脂などの成分がカメムシにとって忌避剤として働くためです。具体的には、以下のような要因が考えられます。
- 酵素:タレに含まれる酵素が成分を分解し、その過程で発生する匂いがカメムシにとって不快感を与える可能性があります。これにより、カメムシはその場所から遠ざかろうとします。
- 香辛料:香辛料の強い匂いや刺激は、多くの虫にとって避けたいものです。カメムシも例外ではなく、焼肉のタレの香辛料成分がカメムシにとって不快であるため、寄りつかなくなります。
- 植物油脂:植物油脂は、カメムシの体表に付着すると、動きにくくしたり、匂いの変化を引き起こし、忌避効果を生む可能性があります。カメムシはその環境を避けるために移動することが考えられます。
これらの成分がカメムシに対して総合的な忌避効果を発揮し、焼肉のタレが有効な対策として利用されているのです。
なぜ酵素がカメムシの嗅覚に作用するの?
酵素そのものが直接嗅覚に作用するのではなく、分解によって生じる匂いがカメムシにとって不快となり、忌避効果を発揮します。
具体的に言うと、焼肉のタレに含まれる酵素は、香辛料やその他の成分を分解することで、新しい匂いを発生させます。この匂いがカメムシにとって嫌なものであるため、カメムシはその場所から遠ざかる可能性があります。
要するに、酵素そのものが匂いを感じさせるわけではなく、酵素が作り出す匂いがカメムシにとって不快だから、嗅覚でそれを察知して近寄らなくなるということです。
焼肉のタレを選ぶポイント
焼肉のタレにはさまざまな種類がありますが、カメムシ対策としては、酵素や香辛料、植物油脂が含まれているものであれば効果が期待できると考えられます。具体的には、以下の点を確認するとよいでしょう。
- 香辛料の含有量:ガーリック、唐辛子、生姜などのスパイスが多く含まれているものがより効果的かもしれません。香辛料の強い香りは、カメムシの忌避に役立つからです。
- 植物油脂の使用:タレの成分表に植物油(ごま油や大豆油など)が含まれているかどうかを確認してください。油脂は虫にとって不快な環境を作り出します。
- 酵素の有無:酵素がカメムシの感覚に影響を与えるため、酵素が含まれているタイプのタレが望ましいです。
市販のタレを使う場合は、経済的な観点からも大容量のものを選ぶか、自家製で作成するのも一つの方法です。主要な材料として、ガーリックや唐辛子を多く含むタレが特に効果的です。
稲におけるカメムシ防除法:焼肉のタレを活用した効果的な対策
稲に対してカメムシを防除するための焼肉のタレの使い方は、次の通りです。これは主に農業で行われる散布方法です。
使用方法
- 焼肉のタレの選定:
- 酵素や香辛料、植物油が含まれている市販の焼肉のタレを使用します。
タレの希釈:
- 焼肉のタレを水で7500倍に希釈します。これは非常に薄い液体を作るために、水とタレをしっかり混ぜ合わせる必要があります。
散布量の目安:
- 10アール(約1000平方メートル)あたりに25リットルの希釈液を散布します。
- 散布面積が広い場合は、例えば14ヘクタールに対しては、タレの中ビン2本分(約1リットル)が目安です。
散布方法:
- 通常の農薬散布機やスプレー装置を使用して、稲全体に均等に散布します。
- 散布(防除タイミング)はカメムシが発生しやすい時期や、食害の兆候が見られた際に行うと効果的です。
効果の確認:
- 散布後、カメムシの姿が見えなくなり、食害も抑えられるとされています。食害が再び増えた場合は、再度散布することが推奨されます。
この方法は、化学農薬を使いたくない自然農法の一環として行われており、焼肉のタレに含まれる香辛料や酵素がカメムシの忌避効果を発揮するものです。
さらに詳しく知りたい方は、『現代農業 2018年6月号』をご参照ください。※農山漁村文化協会の田舎の本屋さんでは在庫切れです。
現在、楽天やAmazon、Yahooショッピング、メルカリなどのオンラインショップで購入が可能です。
カメムシってそんなに鼻がいいの?
結論 : カメムシは鼻がよく効き、嗅覚が非常に鋭いです。カメムシはフェロモンや植物の匂いを敏感に感知し、それに基づいて食べ物や交配相手を見つけたり、危険を避けたりします。
このことから、カメムシが焼肉のタレのような物質に敏感に反応するのは、彼らの嗅覚が非常に発達しているからです。
カメムシを含む昆虫は、嗅覚受容体と呼ばれる特殊な神経細胞を使って、空気中に漂う微量な化学物質を感知します。
特にカメムシは、植物や他の昆虫が放つ化学物質(フェロモンなど)を感じ取る能力が高く、これを頼りに食べ物を探したり、仲間とコミュニケーションを取っています。
研究データによる根拠・裏付け
さまざまな学術分野での研究を発表するオープンアクセスの学術ジャーナルのFrontiersの研究によると、カメムシは嗅覚受容体を通じて、空気中に存在するさまざまな化学物質を非常に敏感に感知することが明らかになっています。これにより、彼らは植物から放出される化学信号(フェロモンやカイロモン)を頼りに食物や交配相手、さらには捕食者を避ける行動を取ります。さらに、カメムシは触角にある受容体を用いてこれらの化学物質を感知し、行動を調整するとしてます。
カメムシの嗅覚システムに焦点を当て、彼らがフェロモンや植物由来の化学信号を感知し、行動を調整する仕組みを解明してる研究者Halyomorpha halysによると、カメムシの触角に存在するオドランド受容体(OR)や臭気結合タンパク質(OBP)が、微量な化学物質を効率的に感知し、それを神経信号に変換する仕組みが明らかにされました。この能力により、カメムシは周囲の匂いに敏感に反応し、特定の匂いに対して忌避行動を取ることができるとされています。
多くの分野で研究を発表するオープンアクセスの学術出版社のMDPIによる別の研究も、植物が放つ匂いや化学物質に対するカメムシの感受性が、種間コミュニケーションや環境適応において重要な役割を果たしていることを示しています。このように、カメムシは環境中のわずかな匂いの変化にも迅速に反応でき、その嗅覚システムは非常に高性能であることが確認されています。
これらの研究は、焼肉のタレに含まれる香辛料や植物油がカメムシに対して忌避効果を持つ理由を裏付けるものであり、タレに含まれる匂い成分がカメムシにとって強い忌避刺激となることが考えられます。
まとめ
カメムシによる稲への食害を防ぐための自然な対策として、焼肉のタレを使った防除法は注目されています。
焼肉のタレに含まれる酵素、香辛料、植物油がカメムシにとって強力な忌避剤として作用することで、化学農薬に頼らずにカメムシの被害を軽減できる可能性があります。特に、焼肉のタレを7500倍に希釈して散布することで、安全かつ効率的にカメムシの被害を防ぐことができます。
自然農法を実践する農家にとって、この方法は環境にも優しく、経済的な負担も少ない有益な選択肢となるでしょう。
合わせて読みたい記事